ランニングをすることで、足の裏が痛くなる疾患には足底腱膜炎や母趾種子骨障害などを今までにご紹介してきましたが、
その他にも、足の裏の感覚障害や痛みが生じる疾患もあります。
足の裏のしびれ感は足根管症侯群と呼ばれる神経障害が代表的です。
しかし、その足根管症候群の中でも、特にスポーツによって生じる疾患に「ジョガーズフット」と呼ばれるものがあります。
これは疾患名の名のごとく、ランニングをすることで足の内側や裏側に痺れ感や痛みが生じる疾患を言います。
このページでは、足のスポーツ傷害の一つとして、
「ジョガーズフット」という足の裏の痛みを訴える症例をご紹介していきたいと思います。
上の絵にあるように、踵からやや前のあたりから痛みがあり、
足の裏の親指側から3番目の指の辺りまでしびれるような症状があります。
ときには、灼熱感を伴うような感覚障害があり、
ランニングによって症状が強くなります。
上の図は足の裏の神経の通り道を現した図です。
くるぶしの上から来た脛骨神経は上の3つの内側足底神経、外側足底神経、外側足底神経第1枝神経に分かれます。
ジョガーズフットと呼ばれる足の裏での神経の圧迫は×印で示した部分で生じるといわれています。
×印を横切って母趾外転筋といわれる筋肉が走っていて、
この部分での神経の圧迫があると、
足の裏の親指周辺から第3趾がしびれてきます。
横から足を見たものが上の図です。
舟状骨と呼ばれる足の骨のすぐ下を通っている神経が内側足底神経です。
上の図は足を後ろから見た図です。
扁平足などの場合、体重をかけると、足の内側の体重が支えきれずに、
足が親指側に傾く傾向が強くなります。
こういった場合には、神経は筋肉の間で圧迫されたり、
牽引されてしまい、痛みがさらに助長されてしまいます。
これがジョガーズフットの病態です。
では以下で症例をご紹介したいと思います。
15歳の女性、足の裏の痛みを訴えて来院されました。
×印の部分を軽くたたくと、足の裏や指に放散する痛みが走ります。
ご本人の話では、歩くときや走るときに痛く、
運動後に灼熱感があるそうです。
同じく左の足も×印のところに同じ症状があります。
レントゲンを撮ってみると、特に疲労骨折も無く、
足のくるぶし周辺の骨にも異常はありませんでした。
横から見たレントゲンでも、
比較的土ふまずのアーチは保たれていました。
足趾を見ると、若干外反拇趾傾向があります。
しかし、他の足趾の変形は見られません。
立っていただいて、足の形状を見ると、
少しばかり踵が外へ向くような傾向にあります。
詳しくラインをひいて調べると、
踵がついているラインで、ふくらはぎのラインとの間に、
若干外へ曲がるような軸の傾きがあります。
それぞれの内側の赤丸で囲んだ部分には、
母趾外転筋の発達が見られます。
足の裏の写真を見てみると、
明らかな扁平足傾向にはありません。
このことから、普段立っている姿勢は
それほど足の内側に負担がかかるような原因は見当たりません。
結局のところ、ランニングなどの運動をするときに、
より内側に力がかかるような動作が今以上にかかり、
足の裏が痛くなるのであると考えられます。
発達した母趾外転筋の走行途中で内側足底神経が
圧迫を受けているのではないかと思われます。
現在は足底板を使用し、力がかかる部分を変えて、
症状を改善させています。
ランニングによって痛みが助長するような疾患は他にもあります。
しかし、走ってみなければはっきりとした症状が出ず、
診察時には意外と症状がわかりづらいものです。
ランニングを行うときに足に痛みがある場合、
今回取り上げたジョガーズフットという疾患である場合も考えられます。
走ったとき、足に痛みがある場合、
我慢せずに早く整形外科を受診される事をお勧めします。