第1ケーラー病

子供さんが特に誘因がなく、足背周辺の痛みを訴える場合、「第1ケーラー病」を疑います。

この疾患は骨端症に分類されていますが、非常にまれな疾患です。

主に、2歳から9歳ぐらいの男の子に多いといわれています。

本人が、「あしが痛い」と訴える場合、

子供さんの場合は、具体的にどの部位が痛むのがはっきりしない事があります。

まずは、当院で経過を追うことができたかたのレントゲン写真をご覧ください。

7歳の男性です。上の図は初診時のレントゲン画像です。

(青丸が健側) (赤丸が患側)

上の写真は、その後のレントゲン写真になります。

6年後は健常な足の舟状骨の大きさまで回復していました。

このように予後は、足の舟状骨が、正常形態に回復すると言われている疾患ですので、経過観察で充分です。

では、このページで、「第1ケーラー病」がどの部位で痛みが生じ、

どういった病気であるのかをご覧いただきたいと思います。

上の図は足を上から見た図です。

足の真ん中あたりにある×印で示した骨は舟状骨といいます。

この舟状骨が血流障害により、骨の阻血性壊死の状態に陥ったものを「第1ケーラー病」と言います。

ですので、お子さんが痛みを訴える箇所は、足背もしくは足の内側周辺の痛みを訴えます。

本人が、痛いと訴えなくても、痛みを回避しようとして自然に足をつくことを嫌がる素振りが見受けられます。

ケーラー病の起こる要因

この疾患の、原因については、明らかになっていない点もありますが、いくつかの要因が考えられます。

一つ目は、足の舟状骨は、縦アーチ構造の要石として位置するため、

前後方向からの圧を受けやすい事が要因ではないかと考えられています。

上の図は、静止した状態から歩いている状態をイメージしています。

体重がかかる事で、足の縦アーチは、低くなります。

その際に、舟状骨は楔状骨と距骨により前後から挟まれることにより圧迫されます。

その結果、舟状骨への血流が阻害され、骨の形状に変化が生じます。

二つ目の要因は、舟状骨へ栄養を供給する血管の問題があります。

上のレントゲン写真は両方の足を上から撮ったものです。

子供さんの足は、いずれの骨もまだ軟骨成分が多いので、骨が丸みを帯びたような写り方をします。

(青丸で囲んだ部分)

一方で、赤い丸で囲んだ舟状骨はケーラー病と診断された際のものです。

もともと足の舟状骨は、栄養血管数が他の足の骨に比べて少ないため、骨化するのが遅いと言われています。

そこへ上記でご説明したような、機械的な刺激が繰り返されることで、舟状骨の虚血がおこります。

その結果、上の図の赤丸で囲んだレントゲン画像のように、骨の扁平化と硬化像として写ります。

        しかし、最終的に、下の成人の足にあるように、血流は他の骨と同じように回復し、

赤い丸の中央部に見えている骨のような形になります。

ケーラー病の治療

痛みと腫脹が強い時期は、一時的にギプス固定を行いますが、
痛みが和らいだ時期をみて、足底アーチを支えるような足底板に切り替えて経過を見ます。

その後は、半年おきぐらいに、レントゲン撮影を行って、患部の様子を見ることになります。

その後の経過はほとんどが1~2年の間に、健常足と同じような舟状骨の形になると言われています。

この病気の場合、即座に何か処置をしないといけないというわけではありませんから、

治療をきちんとしてもらえていないと誤解を受けるかもしれません。

しかし、ケーラー病の病態を考えると、一番必要なのは経過を継続的に見る事なのです。

予後は、心配ないと言われている疾患ですので、

その辺を御理解いただいて、経過をみせていただきたいと思います。


7歳男性です。

初診から経過をみて最終は12歳の時の骨の状態をフォローアップできたのでご紹介します。

上の写真は、初診時のレントゲン写真です。

(青丸が健側)(赤丸が患側)

上のレントゲン写真は、その後の経過をおったものになります。

6年後は健常な舟状骨の大きさまで回復していました。

以上のように、子供さんが、怪我をした様子もないのに足の痛みを訴えておられる場合には、
このページでご紹介したような疾患もあるので、
痛みの原因が何であるのかわからない場合には、整形外科を受診されることをお勧めいたします。

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