五十肩でも過ごしやすくする工夫をしましょう!
よく耳にする「五十肩」という疾患名は医学的には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。
この「肩関節周囲炎」ははっきりと原因のわかるものもあれば、
いまひとつ原因がはっきりしないものもあります。
肩関節周囲炎が痛みだけでなく、
関節が徐々に動かなくなってしまう状態を「肩関節拘縮」といいます。
そこで、このページでは、肩関節拘縮もしくは肩関節周囲炎の状態で、
どのような日常の工夫が有効なのかを中心に御説明したいと思います。
一口に肩関節拘縮といっても、
以下の表のように分類されます。
原因の不明な場合と、原因がある程度明確になっている場合とに分けられます。
原因として全身性、関連性、肩関節性など診察によって明確になった場合は、
その原因を改善するように処置が施されます。
一方で、はっきりした原因がなくて徐々に肩が動かなくなってしまう場合もあります。
これを一般に「五十肩」といいます。
そういうわけで、いわゆる「五十肩」には治療すべき原因となる疾患がないので、
「この病名だから、この治療」というような具体的な手段というものが確立していないというのが実情です。
ですので、表出している症状の時期によって、
治療の進め方が異なってきます。
「そのように説明されてもピンとこない!」とおっしゃる方も多いと思います。
ですので、以下でいわゆる「五十肩」の時期における治療について御説明したいと思います。
下の絵は肩を前から見た図です。
ピンク色で示した部分が主に「五十肩」で押さえた時痛い部分です。
上の図のように、一か所ではなく、数か所にわたって痛みがある場合が多く見受けられます。
肩の後ろ側から見た時に痛む部分が上の絵のピンク色の部分です。
肩の関節だけに限らず、肩甲骨や脊椎に近いところまで押さえて痛い部分があります。
肩関節は左の図のような3つの靭帯によって支えられています。
さらに、この周りには筋肉などが存在しています。
左の図の一番下の靭帯は下にc字型になっていて、
腕を下におろしているときにはゆとりがあります。
腕を上げていくときには、
緊張して上腕骨が下へずれ落ちないように支える働きがあります。
ところが、一番下の靭帯が緊張した状態ができると、
動きにゆとりが無くなり、
腕を上げた時に引っ張られるような感じになって、
腕を上げようとすると動かなくなったり、
痛みが生じたりします。
この状態が「肩関節が固まった」状態です。
この緊張がどうして起こるのかはいまだに不明な部分があるのですが、
病理学的に「繊維化」といって硬くなってくるのではないかといわれています。
緊張は1つの靭帯だけに限らず、
他の靭帯や滑液包にも影響が出て、
「瘢痕化」と呼ばれる硬い組織に変化するといわれています。
ですので、肩の周り全体が硬くなってしまって、
「肩関節拘縮」が起こるといわれています。
ですので欧米では「Frozen shoulder」(凍った肩)と呼ばれています。
左のレントゲン写真は肩関節の中に造影剤を入れて
関節を取り巻く袋の形状を写したものです。
造影剤で映し出された下の部分には、
垂れ下がったような部分があります。
この垂れ下がった部分のゆとりがあるので、
肩関節がスムースに動きます。
ところが、「五十肩」になった肩の造影写真を見てみると、
左のように垂れ下がった部分がありません。
しかし、肩を動かすゆとりが無くなっているだけで、
骨には異常がありません。
ですので、一般にレントゲンを撮っても
レントゲンは骨だけを写しだすので、
異常は見つからない場合がほとんどです。
では、五十肩にはどのような症状がみられるのでしょうか?
実は五十肩の時期によって症状は変化します。
まず初期の段階「筋痙縮期(きんけいしゅくき)」では
炎症が強い時期であるので、
鋭い痛みが発生します。
その痛みが筋肉のけいれんを引き起こし、
さらに痛みを増加させてしまいます。
ですので、この時期の治療としては、
痛みどめなど、炎症を抑える治療が有効とされます。
痛みが強いこの時期には筋肉を無理に動かそうとして、
筋肉のけいれんを増強してしまうことがあるので、
無理に動かすのはあまりお勧めできません。
上の時期を過ぎると「筋拘縮期(きんこうしゅくき)」がやってきます。
この時期になると、肩を動かした時の痛みは多少和らぎます。
しかし、肩が硬くこわばってしまい、
動かせる範囲が制限されてしまいます。
この時期を「Frozen期」ともいいます。
この時期では肩の痛みが強くならない範囲で動かしていくことが大切です。
日常生活でも、無理な肩関節の動作は避けて、
動かせる範囲で動かしていくことが大切です。
さらに、時期が進んでくると「回復期」へ向かいます。
この時期にリハビリを徹底的に行って、
一早く肩関節の柔軟性を取り戻す必要があります。
肩の痛みや不快感も少なくなってくることから、
凍結した肩が「溶け始める時期」ともいわれています。
ですので、回復に向かう時期なので、
リハビリが重要になってきます。
では、それぞれの時期にどのようにリハビリすればいいのでしょう?
左の図の左側にあるように緑の丸の中にある「急性期」の場合には、
筋けいれんが強く痛みも強いでので、痛み止めや関節注射などで、
すこしでも痛みを起こさないようにすることが大切です。
慢性期に向かい、肩が動かなくなってくると、
徐々に動かして肩の可動域を広めることが大切です。
この時期になると、痛みも少し和らいでくるので、
温めることも有効です。
慢性期には肩を冷やさないように注意して、
夏の時期でも直接肩にクーラーの風などが当たらないようにしましょう。
また、全身のリラックス効果も含めて、
ゆっくりお風呂に浸かって肩を温めることもお勧めです!
肩を覆うということが大事なので、普段の工夫として、
少し厚手のシャツを着たり、
肩保温用のサポーターをつけることもお勧めです。
温めるということのほかに、
肩を守るという方法もあります。
この考え方は、腕は肩にぶら下がっている仕組みになっていて、
肩関節には常に腕の重みが負荷になって掛かっていると思ってください。
ということは、この負荷を除去してあげると、
肩は楽になるということです。
ですので、肩に腕の重みや荷物の重みがかからないようにしてあげましょう!
急停車などで、急に握り棒をつかんだ場合などには、
肩に大きな負担がかかります。
こういったときに五十肩の人は、肩に鋭い痛みが走ります。
通勤時にこういったことで痛い思いをされた方も多いことと思います。
握り棒をもつ時などは、
なるべく肘を締めて肘を体に近い位置にして持ってください。
肘を締めることで、引っ張られる力が肩にかかるのを軽減します。
鞄を肩にかけるときには、悪い方の肩に鞄をかけないようにしてください。
手提げかばんや、買い物袋なども、良い方の手で持ってくださいね。
また、キャリーバッグを引くことも肩の負担になります。
押すことができるキャリーバックだったら、
引っ張ることよりも、押すことをお勧めします!
また、御買物のときには、
カートを使用することをお勧めします!
また、物を肩より上の位置に置く時には、
下に台を置いてその上に乗り、
腕が袖口より上に上がらないように注意しましょう!
では、寝るときにはどういった姿勢が楽なのでしょう?
バスタオルなどを2~3回折りたたみ、左の図のように腕の下に置きましょう。
こうすることで、腕の重みで肩が下に引っ張られることを防ぎます。
また抱き枕などを抱えるようにすることで、腕を体の方に安定させ、
肩に腕の重みがかからないようにします。
このように、寝るときにも工夫をしてあげることで、
就寝時の痛みを和らげることができます!
五十肩になると、突然ギックっとした鋭い痛みが肩を走ります。
しかし、どういったときに痛みが生じるのかを考えて、
そういった姿勢や動きにならないようにすることで、痛みの発生を防ぐことも可能になります。
また、温めるのか、冷やすのか、迷うこともあると思いますが、
基本的に、御自分がやってみて症状が改善されると思われる方を選んでいただいて結構です!
また、動かした方がいいのか、安静にした方がいのかということについては、
「五十肩のリハビリのページ」で御説明したいと思います!