前腕内側皮神経痛
前腕部で痺れ感を訴えておられる患者さんは、
頚椎での神経の圧迫が原因で痺れ感が出ていると言われたり、
胸郭出口症候群であると言われている方もいらっしゃいますが、
まったく違った原因である場合があります。
このページでは、上記のような原因とは違った理由で起こる「前腕内側皮神経麻痺」についてご覧いただきたいと思います。
〜症例1〜
23代の女性です。
右手前腕の内側の痛みを訴えて来院されました。
他院でアレルギー検査の目的で、採血のため、肘の内側に注射針を刺入された瞬間、同部位に激痛を覚えたそうです。
その後、痛みが続くため、来院されました。
こちらの写真の丸で囲んだ範囲にしびれ感と、知覚の低下があり、皮神経麻痺であると考えられました。
また、肘の部分にある黒い×印のところには、強い圧痛と、軽くたたいた際に、知覚低下が生じている領域にひびくという、Tinel signが確認できました。
ではこれは、どういった経緯で起こったものなのでしょうか?
この図は、前腕の神経の走行と、その神経が担当する知覚領域を示したものです。
今回の場合、採血の際に赤い×印で示した部分に注射針を深く刺入したため、前腕内側皮神経を傷つけたことが原因であると考えました。
このように、細い注射針でさえも、神経を傷つける場合があります。
ですので、肘から採血する場合には、できるだけ橈側で血液を採取する事が安全であると言えます。
また針を深く刺入しないように注意する必要があります。
この方は、来院されてから約5週間後には知覚の回復が認められました。
静脈注射では、上記のような状況がありうるので、注意が必要になってきます。
こういった知覚異常は経過観察をすることで回復してきますが、
患者さんにとっては不快なものであると思います。
注射によってこういったことが起こらないように、当院では注意をはらっております。