主に体重のかかる部分に骨脆弱性骨折は生じますが、
最終的に地面からの衝撃を受ける中足骨や踵骨にも骨脆弱性骨折は見受けられます。
このページでは、あまり多くはみられませんが、前足部である中足骨の骨脆弱性骨折をご紹介します。
下の絵にあるように、
体重を支えるために分散された力と、地面からの反力によって中足骨や踵骨の後方に負担がかかります。
骨粗鬆症が基盤となって骨の強度が弱くなった所に、
上記のような力が加わり続けることで、骨脆弱性骨折が生じます。
実際、レントゲンを撮ってみると、初診時にはわからない骨折線が、
時間の経過とともに骨硬化像(赤矢印の部分)としてあらわれてきます。
下の写真は第1中足骨の骨脆弱性骨折の一例です。
では、実際の患者さんについて御紹介したいと思います。
〜症例〜
70歳の女性です。
歩くと右の足背部が痛いということで来院されました。
この方は、2か月前から同部位の痛みを訴えておられて、湿布を貼ったり、足底板処置をして経過を見ていたのですが、なかなか痛みが完全にとれず、再確認したところ軽度の足背部が少し腫れていて、赤くなっていました。
レントゲン写真を撮ったところ、特に異常所見はなかったのですが、痛みが長引いており、患部の病態を詳しく確認する意味で、MRIを撮影しました。
すると、第2中足骨の真ん中に黒い帯状の骨折線が確認できました。
(赤丸で囲んだ部分です。)
ですので、骨脆弱性骨折であると判断できました。
治療としては、足底板を処方して靴に入れ、患部の骨に負担がかからないようにして、様子を見ました。
1ヶ月後のレントゲン写真です。
赤矢印で示したところに、骨癒合を示す仮骨が見られました。
ですので、中足骨は完全に骨癒合をしたと判断しました。
中足骨を拡大したのがこちらのレントゲン写真です。
赤矢印の先に仮骨による膨らみが見えます。
この時点で、痛みも消失し、歩くのにも問題がなかったので、治療を終了しました。
中足骨の骨脆弱性骨折は、最初はレントゲン写真ではっきりとわからないのですが、
足底板処置などをして、患部にある程度負担がかからないようにしながら様子を見ます。
それでもなお痛みが完全にとれず、長引いている場合は、
再びレントゲンを撮ったり、MRIを撮ることで、
骨脆弱性骨折を発見することができます。
骨粗鬆症があって、原因不明の足部の痛みが続いている場合、
骨脆弱性骨折を疑ってみてください。
また、そういった場合には、痛みを我慢せずに
早い目に整形外科を受診されることをお勧めいたします!