私たちは快適に生きていく手段として、皮膚を保護し、
保温機能を持つ服を着て、靴を履いて社会生活を送っています。
そして、筋肉、関節など運動器の働きで、歩いたり走ったりしています。
靴の機能は、社会生活を送る上で足を保護する役割以外にも、
自己をアピールする重要なファッションとしての役割があり、
「おしゃれは足元から」などといわれることから、
足に合わない靴でも無理をして履く人が多い傾向にあるように思われます。
今回、当院で経験した足の痛みの原因となった靴障害について
以下でご紹介したいと思います。
靴の構造とその名称
男性用の靴
女性用の靴
甲革 | 靴の甲部を指す。 |
中底(insole) | 靴の中にしかれたもの、直接接触するので、吸湿性に優れており、足趾の屈曲する力に耐え、クッション作用もある。 |
表底(outsole) | 本底のことを指す。靴の底にとりつけられる保護部品である。 |
踵(heel) | 踵部分を支えるもので、ある程度の高さが必要。高すぎると問題である。 |
ヒールカウンター | 足のかかとを包み込む部分。ヒールカウンターのカーブが足のかかとのカーブによくフィットすることが非常に大切。 |
トップライン | 靴の履き口の縁のこと。トップエッジともいう。 |
舌革(tongue) | 紐靴の紐の下あたりにあり、ゴミや砂除けのためにある。 |
先芯 | 表皮と裏皮が入っている補強材。つま先の型崩れを防ぐ役割がある。 |
シャンク | 足アーチ(縦アーチ)部を支え、靴のアーチ部がゆがまないように中底と表底の間に埋め込んである細長いばね。 |
靴にはそれぞれ各パーツごとに役割があります。
上記の靴のパーツの機能がしっかりと働くことによって、足は守られます。
そのために、足に合った靴を選び、靴のはき方に気をつけることが大切です。
靴ってどうやって選んだらいいの?
正しい靴の選び方
足の健康を守るためには、自分の足の形に合った靴を選ばないといけません。
しかし、実際は、足の形よりも、
デザインを優先して靴を選んでしまう方が多いかと思います。
そのため、足に合っていない靴をはき続け、足の痛みが出てきて、
病院を受診される方がいらっしゃいます。
では、どのように靴を選べばいいのか、
以下の図で詳しくご説明したいと思います。
足は一日のうちで、夕方が一番むくんだ状態になるといわれています。
靴を選ぶのは、夕方がいいといわれているのはこのためです。
一番足がむくむ時間帯に靴を合わせると、
後から窮屈になるといったことがないからです。
いろんなサイズを試し、両足ともに試着し、実際に歩いてみることが大切です。
子供の靴選びでは、すぐに成長して足が大きくなるからといった理由で、
大きめの靴を履かせている親御さんもいらっしゃるかと思います。
ワンサイズ大きめの靴を履くと、アーチサポートの位置や、
足趾の屈曲位置がずれて、
つまずきやすくなる恐れがあるなど、快適性が低下してしまいます。
子供の靴選びは、成長とともに半年に一度買い換えることが理想的です。
高齢者の場合は、高齢者の身体機が低下しているため、
靴を選ぶときには、さらに以下の表で示すような点にも注意して、
靴を選ぶことが大切です。
高齢者の特徴 | 靴選びのポイント(高齢者の場合) |
脚筋力の低下・運動神経の低下 | 軽くて、絶対に滑らない靴 |
すり足歩行になりがち | 普通の靴より、つま先が上がっている靴 |
足底アーチの低下 | 中足骨パッドなど、アーチサポートが入っている靴 |
年齢によっても、靴の選び方は違ってきます。
靴を選ぶときには、上の靴選びのポイントを
参考にしていただければと思います。
足の痛みは靴を見る
足の痛みを訴える場合、必ず靴を見ることが大切です。
靴を観察することで、歩き方の特徴や、
改善するポイントで治療方法がわかります。
そこで、靴のどの部分を注意してみると良いのかというと、
一つは靴の底(アウトソール)を見ることです。
それぞれの靴底の特徴と、それからわかることを
以下の表でご覧いただきたいと思います。
靴底の具合 | 特徴 | 対処法 |
| 縦アーチパット | |
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アールウェッジパッド | |
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ヒールパット | |
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靴底の具合 |
特徴 |
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対処法 |
縦アーチパット |
靴底の具合 |
特徴 |
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対処法 |
アールウェッジパット |
靴底の具合 |
特徴 |
|
対処法 |
ヒールパット |
靴底の具合 |
特徴 |
|
対処法 |
|
理想的な靴底の減り方は、以下の図で示す赤色部分が減って来るものです。
その理由は、歩行時には、踵から着地し、重心が前へ移動し、
最後に母趾の付け根から母趾にかけて蹴り出すという動きをします。
したがって、上の図のような靴底の減り方をするのが、理想的になります。
靴底以外では、靴の素材や、堅さなどを観察することも非常に大切です。
また、実際に痛みを訴える靴を履いて、
痛みの部位と一致しているか確認することも重要です。
足幅が合っているかどうかは、靴を履いた状態のレントゲン画像と、
靴を履いていない状態でのレントゲン画像を比較することでわかります。
このように足の痛みと、履き物(シューズ)は非常に密接な関係にあります。
してはいけない靴の履き方
ほとんどの人は靴紐や、マジックベルトを締めたままにしているため、
靴をはく際には靴の踵部分を踏み、
ベロ(舌)を持ち上げて前足部を入れてから、
踵部分に指を入れ、引き上げるように履いているかと思います。
このようなはき方をすると、踵(ヒールカウンター)に芯が入っており、
踵をしっかりホールドしているにもかかわらず、
踏みつけることによって、芯が折れてしまい、元に戻りません。
子供靴は、幅広に作られていることが多く、
足幅の狭い子供たちが、フィットする靴は少ない傾向があります。
ただでさえ、足回りが緩いのに、靴紐やマジックベルトを
ほどかずにそのまま靴を履くことは、
足と靴がフィットしない原因になります。
また、長期間履いている靴は、消耗するのが当然です。
消耗してすり減った靴をはき続けていると、
足に様々な痛みを引きおこす原因となります。
靴底の偏りが、強く出ているものは、早く新しい靴に変えることが大切です。
いい靴を選んでいたとしても、
間違ったはき方をしていると、その効果が出ません。
足に合った靴を選び、間違ったはき方をしないように注意してくださいね!
靴を履いて、こんな足の痛みはありませんか?(靴障害)
足の痛みについて下記の項目をクリックしてください。
それぞれの疾患の詳しい説明がご覧いただけます。
②靴のエッジ(トップライン)の部分が内、外くるぶしの下で食い込んで痛い!
靴障害は、日常でよく見られる疾患です。
けがをしていないのに、足が痛かったり、
靴を履くときだけ、足が痛くなる場合には、
靴に問題があることが多いのです。
また、スパイクや、デザイン性の高いおしゃれな靴は、
足の形にあっていないと、歩くだけで足が痛くなり、不快感が出現します。
靴はデザイン性ではなく、自分の足に合った靴を選ぶようにしてください。