外反母趾は皆さんよく聞いたことのある疾患だと思いますが、
それとは対照的に足の小趾が内側に曲がる変形のことを「内反小趾」といいます。
ただ変形しているしているだけなら、問題はないのですが、
痛みをともなって靴が履けないとか、タコができて痛くて辛いなど、
そういった症状が現れた場合には、対処が必要になります。
このページでは「内反小趾」とはどういった疾患なのか、
また、その対処法についてご覧いただきたいと思います。
上の写真が「内反小趾」の患者さんの足です。
赤い丸で囲んだ部分がくの字に内側に曲がっています。
足の指が痛い場合、どこに相談したらいいのか、一般の方にはわかりにくいものですが、
整形外科で足の痛みはご相談いただけます。
内反小趾の病態
内反小趾は第5中足骨頭が幅広で、大きいことや、弯曲しているなどの場合に、
窮屈な靴によって圧迫や摩擦を受けることによって発生します。
外反母趾とともに発生する場合もあります。
ではどういった場合に内反小趾という症状がでるのでしょうか?
上記の3つのタイプの内反小趾があります。
結局、この状態で窮屈な靴が骨に当たることで、皮膚の部分との間で摩擦が生じ、痛みが出ます。
実際のレントゲンでは、上の写真のように写ります。
このように足全体が扇状のように広がっている足の形状を「開張足」といいます。
治療の進め方
まずは、靴を変えてみることをお勧めします。
靴の幅(ワイズ)の広い靴に変えてみることが、まず第一の方法です。
開張足に対する対処法としては、以下のような足底板を処方します。
横アーチを上げることで、中足骨列全体の広がりを抑える目的で足底板を処方します。
また、下の写真のように第5中足骨頭を保護するようなパッドを合わせて使用します。
リハビリとしては、足の内・外在筋の筋力強化を目的として、タオルギャザーなどを行います。
それでも痛みが取れない場合や、長期にわたってお困りの場合には手術療法適応になります。
では、以下で実際の患者さんについてご覧いただきたいと思います。
40歳代の女性です。
両方の足の小趾の付け根が痛いということで、
来院されました。
半年前から、ヒールをはくと痛みが生じていたのですが、
1ヶ月前からはスニーカーを履いても痛いということで、
困っておられました。
左の写真にあるように、
赤色矢印の先の部分が当たって痛むそうです。
左右の足を比べてみると、
左足のほうが特に痛むということで、
確認をしてみると、
やはり赤矢印で示した部分が
明らかに当たっていることがわかります。
レントゲンを撮ってみると、
中足骨頭の部分が靴の端に当たっているのがわかります。
そこで、当座の処置としては、
当たって痛む所を靴から保護するために、
パットを作って直接当たらないようにしました。
同時に、靴も痛い箇所が当たらない靴にすることを
お勧めしました。
パッドでは普段から頻繁に使うことができないので、
ほかの靴を履いても痛みが出ないように、
既成の内反小趾用のパッドを入れていただくことにしました。
こうすることで、ヒールの靴でも痛みなく
履いていただくことができるようになりました。
65歳の女性です。
左の小趾の付け根が 痛むということで来院されました。
この方は以前から足の変形について悩んでおられましたが、
靴が当たって痛いということで、相談に来られました。
小趾の付け根は胼胝ができていて、
その部分が靴に当たっていたことがわかります。
レントゲンを撮ってみると、
内反小趾変形が著しかったのですが、
御本人は手術を希望されませんでした。
ですので、横アーチーを支える足底板を靴に入れて、
様子を見ることにしました。
50歳代の女性です。
以前から、足の小趾の変形があったのですが、
仕事でゴム長靴を履いて立ち仕事をするようになってから、
右足の小趾の痛みが強くなって、相談に来られました。
見ると、右足の内反小趾変形がわかります。
靴が当たっていた部分は、赤く腫れていました。
レントゲンを撮ってみると、開張足が明らかで、
骨頭が外方に突出しているのがわかります。
骨頭の部分をさらに詳しく見てみると、
小趾の関節で亜脱臼が生じるぐらいまで変形していました。
ですが、この方は手術を希望されなかったので、
ゴム靴を履いた時でも患部が当たらないように、
横アーチを支える足底板を処方しました。
また普段履きの靴から、靴を変えてみていただき、
足底板を入れていただくことにしました。
30代の女性です。
左の小趾の付け根の痛みを訴えて来院されました。
歩くと常に痛みが生じるので、
足底板処方や靴を変えるなど方法を考えましたが、
おしゃれな靴を履きたいということで、
手術されることを選択されました。
手術で、第5中足骨頭の隆起部を切除しました。
手術前のレントゲンと、手術後のレントゲン写真の比較です。
第5中足骨頭の隆起部がきれいに削れています。
これで、靴に当たる部分がなくなり、
靴を履いて歩いても痛みが出なくなりました。
内反小趾は意外に靴の選び方で改善できるものです。
たとえ変形があったとしても、まずは靴をかけてみることをお勧めします。
それでもなかなか改善が見られないときには、パッドや足底板などを処方して痛みが緩和できるかどうか様子を見ます。
それでも、だめな時は手術療法をお勧めすることもありますが、
ほとんどの方は、靴を変えたり、パッドや足底板を入れることで改善できます。
足の小趾の痛みでお悩みの方は、一度ご相談ください。