関節リウマチの治療で臨床応用されて、
画期的な効果をあげている治療薬に「生物学的製剤があります。
「生物学的製剤」とは、遺伝子工学に基づいて作られた抗体で
先のページでお話した炎症性サイトカインを標的とした治療薬です。
このお薬のおかげで、関節破壊を抑制し、関節リウマチを寛解に導きます。
現在国内で使用されている2種類の「生物学製剤」について
このページではご説明したいと思います。
リウマチ治療は、まず症状を抑えるために「抗リウマチ薬」を投与し、
血液検査などをおこなって、その効果を確認していきます。
同時に、「メトトレキサート」と呼ばれる免疫抑制剤も平行して投与していきます。
「抗リウマチ薬」と「メトトレキサート」を投与して、
約3ヶ月間効果を観察します。
以上の2種類の薬品で効果が不十分であると考えられるときには、
「生物学的製剤」に切り替えます。
「生物学的製剤」の効果は、関節破壊の抑制にあります。
下のグラフは「生物学的製剤」の効果を表したものです。
グラフの内容を以下で説明します。
一番左のグラフは「プラセボ」と呼ばれる擬似薬で、
右の4つの薬品群と、薬品を使わなかった場合とを比較するために用いられています。
「プラセボ」の右隣二つのグラフは「生物学的製剤」3mg/kgを生理食塩液にまぜて
2時間点滴した群の効果を示しています。
「プラセボ」の数値4.3に比べ、「生物学的製剤」3mg/kg投与群の数値は
0.4、0.5に下がり、「生物学的製剤」が有効に働いていることがわかります。
さらに「生物学的製剤」投与量を10mg/kgに増加させた場合には
8週間隔で投与した場合には数値は1.0、
また、4週間間隔で投与した場合には0.0になり、
「生物学的製剤」の効果が一番あったということを示しています。
すなわち、関節破壊の抑制効果が十分にみられたことがわかります。
また、注射タイプの「生物学的製剤」の効果を見るのが下のグラフです。
MTXは「免疫抑制剤」を「エタネルセプト」は「生物学的製剤」を指しています。
「免疫抑制剤」のみの場合と「生物学的製剤」のみの場合には
数値が0より上昇していて、骨破壊が少しばかりではありますが進んでいます。
しかし、「免疫抑制剤」と「生物学的製剤」を合わせて投与した場合には
数値が0以下になり、骨破壊が抑制されたことがわかります。
以上の資料は「最新医学社」の「関節リウマチ」、宮坂信行編 p209.p211より引用させていただきました。
では、こういった投薬治療をいつまで続けなければならないのでしょうか?
最新の知見では、
治療開始して2年後で約6割の方が治療判定良好のため
「生物学的製剤」の投与を中止できたという報告があります。
ですので、早期リウマチであればあるほど、「生物学的製剤」のような治療薬を用いることで
関節破壊が起こることなく、約3年後ぐらいにおいては、
治療薬すらも必要でなくなっている場合も出てきています。
関節リウマチは決して治らない病気ではありません。
早期発見し、早期治療を開始すれば、
寛解へ導くことのできる病気です。
リウマチかもしれないと思われたら、少しでも早く病院へ行って、検査を受けてみてください。
早期であればあるほど、治療期間も短く、寛解できる確立も高くなります。