足関節の捻挫と思っていて、実は骨折していたというケースはよく見受けられます。
そういった、見逃されやすい骨折の一つに今回ご紹介する「踵骨前方突起骨折」があります。
このページでは、踵骨前方突起骨折とはどういう骨折であるのか、
実際の患者さんの例も挙げながらご説明していきたいと思います。
足関節捻挫との圧痛点の違い
足関節捻挫をした場合にも、踵骨前方突起骨折をした場合にも、足関節の腫脹や痛みがあります。
しかし、足関節周辺の捻挫では、圧痛は青色×印の部分に見られますが、
踵骨前方突起骨折の場合は赤色×印の部分に圧痛点があります。
上記のような、圧痛点の違いから、踵骨前方突起骨折を見分けることができます。
踵骨前方突起とはどこですか?
上の図は、足関節を外側から見た図です。
踵骨前方突起には立方骨にまたがる踵立方靭帯と、舟状骨にまたがる踵舟靭帯が付着していて、
この二つの靭帯を合わせて二分靭帯とも呼ばれています。
何らかの外力が加わることで、2つの靭帯が付いている所で、裂離骨折してしまいます。
こういった骨折のことを「踵骨前方突起骨折」といいます。
どうしてこの骨折が起こるの?
上の図は、踵骨前方突起骨折を引き起こすとされる捻挫の仕方です。
左上の図は、足首を少し伸ばした状態で、前足部に内がえしの力が加わることで、
踵骨前方突起が二分靭帯に引っ張られて裂離骨折が起こります。
一方、右上の図では、足関節を背屈した状態で、前足部に強く内返しの力が加わり、
踵骨前方突起部に剪断力が加わり、生じると言われています。
レントゲンではどう写るの?
上の写真は、足関節を外側から撮影したレントゲンです。
下の写真は前方突起部分を拡大したものです。
健側と比較すると、患側の赤丸印の部分で前方突起の骨折が起こっているのがわかります。
まれに、レントゲンだけではわかりにくい場合にはCT撮影を行う事もあります。
治療としては、踵骨前方突起骨折が認められた場合には、ギプスなどで固定の処置を行います。
固定期間は約4週間ぐらいで、骨折部分の安定が得られます。
ですので、骨折があることがわかれば、固定による保存療法で治療することができます。
では、以下で実際の患者さんの例をご覧いただきたいと思います。
56歳の男性です。
右足関節の痛みを訴えて来院されました。
約1年前、六甲山にハイキングに行き、イノシシに襲われた際、
岩から飛び降り、足関節を捻挫し、受傷されたそうです。
翌日、近隣の病院へ行かれたそうですが、
骨折は無いと言われ、何も処置を受けられなかったそうです。
しかし、現在も足が痛いという事で、当院へ来られました。
レントゲン撮影をしたところ、踵骨前方突起骨折であるとわかりました。
しかし、受傷後1年経過しており、骨癒合の見込みは無いので、
痛みをとる治療として、患部に注射をし、
日常生活で痛みが出ないように固定を行いました。
19歳の女性です。
左足外側の痛みを訴えて来院されました。
2日前、体育でランニング中、足首を伸ばした状態で
前足部を内返し手受傷されました。
受傷とともに足にポキっと音がし、その後歩行が困難となりました。
写真は、足を前から見たものです。
左足が少し腫れていることがわかります。
足の外側から見た外観写真では、
皮下出血も認められ、赤い矢印で示す部分に圧痛点がありました。
レントゲン撮影を行うと、
赤丸矢印部分の踵骨前方突起部での骨折が疑われたため、
CT撮影を行うことにしました。
左のCTは、足を外側から撮影した画像です。
赤丸で示した踵骨前方突起部で骨折が確認できました。
また、右の図は踵の方から撮影したものです。
この画像でも、踵骨前方突起部(赤丸印)の部分で骨折が確認できました。
治療は、骨癒合を目的とし、ギプスによる固定を行いました。
単なる捻挫と思っていても、実は骨折であったということもあります。
捻挫をして放置していた場合、痛みが長引くこともあります。
捻挫をしただけだと、甘く見ずに、きちんと医療機関を受診されることをお勧めいたします。