ガングリオン

強く打ったとか、捻挫した覚えが無いのに、
関節近くに腫れができて、気になって御来院になる患者さんがいらっしゃいます。

そういった場合、多いのは「ガングリオン」です。

ガングリオンは腫瘍ではありません。

ガングリオンは痛みもなく、袋の中に水が溜まって腫れているだけで悪性のものではありません。

大きくなってくると見た目が気になるので手術で除去する場合もありますが、
あせって手術しなくても、多くの場合、自然消滅します。

ですので、あえて手術の必要はありません。

以下で、当院の患者さんの治療の様子や、ガングリオンの消滅について見ていただきたいと思います。

(日本手の外科学会監修・疾患別パンフレット「ガングリオン」より引用)

上の写真は、ガングリオンの内容液を注射器で取り出したところです。

内容液がゼリー状になっていることが、お分かりいただけると思います。

当院でのガングリオンの治療

ガングリオンの治療には、外科的摘出法・穿刺・圧潰・放置などの方法があります。

ガングリオンの治療に関しては手術療法の報告が多いのですが、
当院では、主に経過観察を行っています。

その理由は・・・

皆さん、夜店などで買ってきたヨーヨーを連想してください。

買ってきたヨーヨーを放置しますと、ゴムの脆弱な部分に小さな穴が開き、
水が流れ出して小さくなった記憶がありませんか?

ガングリオンが自然に消失するのも、この原理に良く似ています。

放置しておくと、脆弱な部分から小さな穴が開いて、水が抜けてしまいます。

ですので、ガングリオンは放置しておくだけで、自然に小さくなり、いずれは消失します。

そこで、当院でのガングリオンの経過についてご報告します。
「第80回中部日本整形外科災害外科学会」発表演題より

ガングリオンで当院に来院された約200名の患者さんに穿刺もしくは経過観察を行い、
36ヶ月の追跡調査を行ったところ、82.9%の高率で、消失していました。

一方で、ガングリオンの治療は、比較的安易に手術が行われていますが、
再発率が10%~40%という報告があります。

ですので、保存療法の成績は外科手術を行った場合と比べても
良好であるということがお分かりいただけると思います。

当院は、外科的手術によるガングリオン治療も行っていますが、
手術適応になる患者さんは極めて限られています。

26歳女性の患者さんの写真です。

痛みは無いのですが、腫れが気になって御来院になりました。

左の写真の赤丸で囲んだ手首の部分にできている腫瘤がガングリオンです。

同じ方のガングリオンを斜めから見た写真です。

斜めにしてみると、腫れていることが良くわかります。

ガングリオンのよくできる場所は手の関節で、20代~40代の女性に多いと言われています。

しかし、ガングリオンができる原因は良くわかっていません。

治療は、若い女性であり、腫れが気にかかるとのことなので、
穿刺のみを行いました。

上の写真の患者さんのガングリオンをエコーで見た写真です。

エコー検査をする利点は、
1、患部の位置がはっきりわかる。
2、大きさがわかる。
3、中の性状がわかる。
4、周りとの境界部分がわかる。
という4つのポイントが挙げられます。

35歳女性の方で、動かしたときなどに痛むわけではないのですが、

腫れが気になって御来院になりました。

手首の背側の赤丸部分にガングリオンができています。

治療は、患者さんが『注射針での穿刺は痛そうなのでいやだ。』
とのことで、ガングリオンが自然に消失することが多いことを説明し、

経過観察のみを行いました。

上の写真の患者さんの患部をエコーで見た写真です。

赤丸の部分が黒くなっていて、ガングリオンの内部が液体成分であるということが良くわかります。

今度は23歳の女性の患者さんです。

左手首の外観には、異常は見られません。

しかし、手首を返す動作をしたときに痛みがあるということで御来院になりました。

エコー検査をしてみると、骨に近い関節の奥のほうにガングリオンがあることがわかります。

こういう、一見姿が見えないガングリオンを「オカルトガングリオン」といいます。

目に見えないオカルトガングリオンのほうが痛みが強く出ます。

原因不明の痛みがあるとき、エコー検査をしてみると、

このようにガングリオンが発見できる場合があります。
治療は、患者さんの『痛みは強いが注射はいやだ』とのことで、
経過観察のみを行いました。

41歳の女性の患者さんで、腫れが気になって御来院になりました。

エコー検査をしてみると、左側の写真の赤丸の部分に内溶液がたまっているのがわかります。

右側の写真は、穿刺(内溶液を注射器で抜く)治療を行った後に撮ったエコーです。

ガングリオンが小さくなったことがわかります。

また、青い線で囲った部分に関節液が少しずつ溜まっていることも確認できます。

矢印で示しているように、小さな内溶液の塊が互いにつながりあっていることが考えられます。

この患者さんは、指の腫れが気になって、指を曲げたときに時々引っかかり感を感じて、御来院になりました。

こういうガングリオンの場合には、物を握ったり、タオルを絞ったりするときに痛みが出るのが特徴です。

エコー写真は指を輪切りにした状態で見ています。内溶液があることがわかります。

右側の写真は、指を縦切りにして見ています。内溶液の真下には、指を動かす腱があります。

こういう状態のガングリオンを「腱鞘ガングリオン」といいます。

治療は、痛みが強いとのことで穿刺をしました。

再発はありませんでした。

以上で見ていただいたように、

ガングリオンはいろいろな関節の周りにできますが、主に手の関節にできます。

腫れが気になる方が多いのですが、痛みのない場合が多く、
経過を見ながら保存していくことで、だいたい8割ぐらいの方が完治します。

ですので、関節部分で骨や神経を圧迫するなどの特別な場合を除いて、

早急に外科的手術を行う必要性はさほどありません。

気になる方は、是非御相談ください。

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