石灰沈着性腱炎の中で、肩関節に次いで多いのが股関節です。
体重をかけると痛みが増強して、痛くて動かせない時もあります。
ここでは実際にどんな症状がおこるのか御覧頂きたいと思います。
60歳男性、股関節の痛みと、歩行障害を訴えて来院されました。
2日前より、転倒やぶつけたなどの原因がないにもかかわらず、
左の股関節が痛みだし、安静にしていても痛みが変わらないので、来院されました。
外観から、左の赤矢印で示した部分が腫れていることがわかります。
レントゲンを撮ってみると、腫れていた場所に一致して、
石灰の影が見られました(赤色矢印の先)。
エコーを撮ってみると、股関節の深部にある筋肉に
石灰らしき画像がみられました。
ですので、石灰沈着性腱炎であると判断し、
痛み止めのステロイド注射を打ちました。
すると、痛みが激減し、数日で通院の必要もなくなりました。
64歳の女性です。
10日ほど前から、特に原因も無く右股関節が痛みだし、
前日は痛みが強くて歩くのが困難なぐらいになって来院されました。
左の写真にあるように、足を外側へねじろうとすると、
痛みが強くて動きません。
逆に、内側へ足を入れようとすると、
わずかながら動きますが、痛みが生じます。
さらに、股関節を曲げようとしても、
痛みのため深く曲がりません。
これぐらい股関節の動きが制限されて辛い症状がありました。
レントゲンを撮ってみると、
右の股関節の中に石灰化した部分の影が写っています。
(赤色矢印の先)
左の健常な股関節と比べてみると、
石灰化した部分の存在が明らかにわかります。
当日は、ステロイド注射を行って痛みが和らぎました。
約2カ月後のレントゲン写真です。
以前あった石灰の影が小さくなって、
吸収されてなくなっていることがわかります。
このように、石灰化がおこったとしても、
時間の経過とともに、
体が吸収して石灰化した部分は消滅します。
54歳男性です。
初診時は肩関節の石灰沈着性腱炎で来院されました。
初診時のレントゲンでは右肩関節に石灰化がおこった影が見えています。
しかし、 その当時は股関節の痛みはありませんでした。
2カ月後に、肩関節の痛みで再び来院されました。
以前に比べてレントゲンでは、右肩関節にある石灰化の影は薄くなっていました。
しかし、痛みが強かったのでステロイド注射を打つと、
症状はすぐに軽減しました。
しかし、股関節の痛みを訴えて、
初診から半年後に来院されました。
レントゲンを撮ってみると、
石灰の影があり、以前の肩の石灰沈着性腱炎のこともあったので、股関節の石灰沈着性腱炎であると判断しました。
エコーを撮ってみると、
青矢印で示した部分が炎症をおこして、
水腫がたまっている所見が得られました。
男性の場合、股関節が痛くなると、
大腿骨頭に病変がおこっている場合がありますので、
念のため、MRIを撮って確認しましたが、
異常所見はありませんでした。
しかし、黄色矢印の先に、
石灰化した部分が写っていました。
痛みはステロイド注射によって軽減したので、
仕事にもすぐに復帰されました。
股関節の石灰沈着性腱炎は痛みのために歩くのも大変つらい病気です。
しかし、炎症を押さえる注射をすることで、劇的に痛みは軽減します。
股関節に急に痛みがでたら、すぐに整形外科を受診することをお勧めします。