掌蹠膿疱症性骨関節炎 (SAPHO症候群)足裏や手掌に皮膚疹を伴う、胸や肩が痛い!

掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏などにたくさんの無菌性の皮膚疹が出る疾患です。

慢性的に炎症が起こり、この疾患の役10%に骨関節病変を伴うといわれています。

別名「SAPOH症候群」と言われています。

SAHOとは

滑膜炎(Synovitis)、座瘡(Acne)、膿疱症(Pustulosis)、骨化症(Hyperostosis)、骨炎(Osteitis)の

頭文字をとったものです。

今回のページでは掌蹠膿疱症性骨関節炎(SAPHO症候群)についてご紹介し、
リウマチとは違う関節症の症例についてお伝えします。

写真は足底に見られる膿疱です。

水虫などとの違いは、白癬菌が検出されないことや、
足底から踵全体にかけて赤い斑点状の皮疹がでる点です。

写真は胸骨と鎖骨形成される胸鎖関節が腫れているものです。

関節炎症状は腫脹と疼痛が生じて、安静によっても完全に痛みが消失しません。

胸鎖関節は肩の動きに関連しているので、関節炎が進行して、関節破壊が生じると、肩をすくめるような動作や、腕を上げる動作が制限されてしまいます。 

以下で、実際の症例を御覧いただきたいと思います。

右の肩の痛みで来院された30代の女性です。

17歳の頃より掌蹠膿疱症が出現し、
2年前から胸の前、肩の関節痛 に悩まされていました。

他の整形外科や整骨院で痛みがなくならないため、紹介されて、
当院を受診されました。

両手をあげると、両方の手が完全に上まで上がりきりません。

胸鎖関節部を見ると、腫れがあります。しかし、押さえると痛みはありませんでした。

一般に、皮膚症状が出てから1~2年以内に
骨関節炎症状が出現することが多いと報告競れています。

しかし、まれに、発症してからずいぶんたってから関節症が出てくる場合もあります。

中でも、一番発生頻度の多いのが前胸部です。

関節炎の発症する好発年齢は30~60歳で、

男性は30歳代が多く、女性では40歳代が多いと報告があります。

この方の場合、10代で掌蹠膿疱症を発症し、
30代で関節症を発症していますが、関節の肥厚が徐々に生じ、
症状も良くなったり、悪くなったりしながら 現在に至ったようです。

手を見ますと、掌蹠膿疱症が見られましたが、
関節の腫脹や破壊は見られませんでした。

掌蹠膿疱症の場合、徐々に関節が肥厚していく状況になります。

この点が、急に関節破壊が進む関節リウマチとは違います。

足の裏にも掌蹠膿疱症の症状が見えます。 

レントゲン写真を撮ってみると、 
赤い○で囲んだ部分に胸鎖関節の骨性癒合(骨どうしでくっつくこと)が見られ、

第1肋骨(一番上の肋骨)が肥厚しています。

掌蹠膿疱症性関節炎は他にも関節炎症状が出る場所があります。

それは、仙腸関節と呼ばれる腰と骨盤部分での関節に生じるといわれています。

ですので、骨盤や腰椎のレントゲンを撮りましたが、特に問題は見られませんでした。

肩を上げるとどうなっているのかレントゲンで見てみると、
本来、肩関節と呼ばれる腕を上げるときにもっとも大きく動く関節(青丸印)は運動制限が見られず、

やはり、胸鎖関節が動かないことにより、腕が上がらないという原因がはっきりとしました。 

55歳の女性です。

膝に水がたまって、腫れて痛みがあるということで来院されました。

この方は右膝が特に腫れて、
なおかつ足の親指の付け根が痛むという症状もありました。 

足の状態を確認すると、掌蹠膿疱症による皮膚の発疹がありました。 

注射で膝の水を抜くと、関節液はにごっていて、
関節炎症状が生じていることが明らかでした。

ですので、掌蹠膿疱症性の関節炎と判断しました。

投薬を開始して、経過を見ていきますと、
初診時から2ヵ月後、皮膚の発疹は小さくなり、
以前は足の裏の皮がめくれるぐらいになっていたものが、
かなり改善されています。 

初診時から6ヵ月後の写真です。

皮膚の症状が消失し、関節炎症状も落ち着いて、
痛みも無く、問題はほぼ無くなりました。

51歳の女性です。
両手足の皮膚炎で困っておられて他の皮膚科では投薬を受けていましたが、治りが遅いので相談にこられました。

手足に掌蹠膿疱症が見られたので、治療として外用薬にステロイド剤と、内服薬として抗リウマチ薬を処方して経過を見ました。 

1週間後には皮膚の症状が良くなり、
特に手のほうは違和感も無くなりました。 

3ヵ月後、手はほぼ正常にもどりました。

足の皮膚異常はまだ少し見られますが、
初診時に比べて改善してきています。 

上の写真の症状が改善してから5年後、
今度は膝の腫れと痛みを訴えて来院されました。

以前の経過から、
掌蹠膿疱症性骨関節炎と考えました。

ご本人に以前の経過をお聞きすると、経過は良かったのですが、

仕事が忙しくて、治療薬を飲んでいなかったそうです。

今回は左ひざ関節の腫れが特に強くて、
相談にこられました。 

左右を比較すると、
明らかに左の膝が腫れているのがわかります。

足の裏の症状も再発していました。

このように掌蹠膿疱性骨関節炎は
適切に治療することで症状が改善しますが、
再び関節炎を生じてしまうことがよくあります。

ですので、症状を投薬で
上手にコントロールすることが大切です! 

はっきりした原因が無く、関節の腫れが生じると変形関節症の初期かなと思うこともありますが、
このように、皮膚疾患から関節炎が生じるとこもあります。

掌蹠膿疱症だとわかれば、適切な投薬を行うことで、
関節炎は治りますし、コントロールすることも可能です。

そこが関節リウマチとは異なる点です。

皮膚疾患があり、なおかつ関節に痛みがある場合には、
掌蹠膿疱症性骨関節炎を疑ってみてください。

そして、なるべく早く整形外科を受診されることをお勧めします!

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