運動後に下腿の内側(下の写真で示した部分)が痛くなって
お困りになったことはありませんか?
下腿のスポーツ障害の一つに『脛骨疲労骨折』があります。
この疾患は、繰り返す動作が原因で骨にストレスがかかって徐々に骨折してしまう疾患です。
その中で、脛骨疲労骨折(跳躍型)は脛骨疲労骨折(疾走型)に比べて競技復帰にかかる期間が長くなるため
早期発見・早期治療が大切になってきます。
このページでは、脛骨疲労骨折(跳躍型)について、対処方法や、リハビリについて述べていきます。
脛骨疲労骨折(跳躍型)はこの部位で起こります
この図で、色の変わっている部分が疲労骨折の好発部位です。
太い骨が脛骨で、上端部・中央部・下端部・内果部に疲労骨折がよく生じます。
中央部での骨折は、(跳躍型骨折)とよばれます。(赤丸印で示した部位)
脛骨疲労骨折(跳躍型)がおこる要因の一つに、骨の形状が関係します。
左側の写真は、足を前から見たものです。脛骨が内側にカーブしていることがわかります。
右側の写真は、足を横から見たものです。脛骨が前後にカーブしていることがわかります。
このような形状をしているので、ランニングのストップ時やジャンプ時により伸張負荷が働き、脛骨骨幹部に疲労骨折が生じます。(赤矢印で示した部位)
脛骨疲労骨折の発症メカニズム
脛骨疲労骨折(跳躍型)は、
下の図のように、たわみによる伸張ストレスがかかります。
以下の図は、脛骨のたわみによる伸張ストレスを示したものです。
脛骨はジャンプや着地動作で前方凸にたわみが生じ、
脛骨前面に伸張ストレスがかかります。
さらに、筋肉による張力が伸張ストレスを引き起こすため、
脛骨前方を引き裂く力が生じます。
そのため脛骨疲労骨折(跳躍型)は治療に時間を要します。
脛骨疲労骨折(跳躍型)の診断
脛骨疲労骨折(跳躍型)の治療において早期診断が大切になってきます。
上の左の写真は、脛骨疲労骨折(跳躍型)のレントゲン画像です。
赤丸印をしている部位に、骨皮質の異常が確認できます。
疲労骨折の場合は、骨皮質部の厚みが増し、
その部分に水平な線状痕が確認できます。(右の写真、赤矢印の部分)
脛骨疲労骨折(跳躍型)のスポーツ復帰時期
上の左の写真は、初診時のレントゲン写真です。
右の写真は、3ヶ月後のレントゲン写真です。
両方を比較した際、初診時にあった水平な線状痕が3ヶ月後には消失しています。
この線状痕を『black-line』と呼び、
この線状痕の消失が確認できれば骨癒合と判断出来ます。
その時点をスポーツ復帰時期とします。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
〜脛骨疲労骨折(跳躍型)症例〜
13歳の男性で陸上部の長距離をされてます。
左下腿前面の痛みを訴えて来院されました。
約2週間前より痛みがあり、前日に走り終えた後から歩行時痛が強くなったため来院されました。
左の写真は、初診時の外観写真です。
赤丸印の部分に圧痛、腫脹を認めました。
左のレントゲン画像は初診時のものです。
赤丸印の部分に骨皮質の肥厚が確認できます。
左の写真は、赤丸印の部分を拡大したものです。
black-lineの確認ができました。
以上より、脛骨疲労骨折(跳躍型)と診断し、スポーツ中止をお伝えしました。
(赤矢印で示した部分)
左の写真は、初診時より1ヶ月後のレントゲン画像です。
この時点で、歩行時の痛みは消失していました。
しかし、black-lineが確認できたため、まだ、骨癒合が十分でないためスポーツ中止を継続しました。
(赤矢印で示した部分)
左の写真は、初診時より3ヶ月後のレントゲン画像です。
black-lineの消失が確認できたためスポーツ復帰を許可しました。
(赤矢印で示した部分)
脛骨疲労骨折(跳躍型)は難治性でありますが、
早期診断をすることにより早期治療にとりかかれるため、
結果として早期にスポーツ復帰が可能となります。
また、活動休止期間中も
下肢筋力の強化や再発予防のためのストレッチを並行して行うことにより、
スポーツ復帰時に身体機能を落とすことなく参加することができます。
スポーツ復帰の治療法についてはこちらをご覧ください。