ばね指のほとんどが、A1pulleyと呼ばれる腱鞘の肥厚によって
腱の通過障害が起こって生じるとされています。
しかし、中には違った場所でばね現象が生じていて、
他のばね指とは違った症状を呈する場合があります。
そこで、このページでは、A2pulleyでばね現象が生じたばね指について
ご説明したいと思います。
ばね現象が起こる部位
ばね現象が生じる部位で、最も多いのは、下の図でいう所のA1pulleyです。
ですが、まれにA2plleyでばね現象が起こる場合があります。
指がひっかかるという現象は両者とも、一見すると同じように見えますが、
その病態は根本的に違います。
上の図は、指を横から見た図です。
主にA2pulley部で生じるばね指では、その病態は浅指屈筋腱または、
深指屈筋腱の肥厚が生じて腱の滑走が起こりにくくなると考えられています。
このように、A2pulley部でのばね指はA1pulley部で起こるばね指とは異なった
機序で弾発現象が生じます。
それぞれの病態の比較
下の図は、A1pulleyと A2pulley部のそれぞれで
ばね指が起こっている状態の絵です。
A1pulley部でのばね指
A2pulley部でのばね指
両者とも、腱の滑走が悪くなっていることに違いはありませんが、
上の図の通り、病態が全く異なります。
この病態が、実際の症状にどのように出るのか、
以下の動画で見ていただきたいと思います。
ばね現象の違い
一般的なばね指(A1pulley部でのばね指)
A2pulley部でのばね指
両者を比較してみてみるとA1pulley部での弾発現象は、
指を曲げきったところから伸ばす時に起こります。
一方、A2pulley部で起こる弾発現象は、
末梢側にある腫大した腱が中枢側へ腱鞘内を通過する際に生じます。
したがって、指を曲げるときに弾発現象が起こります。
以下で、実際の症例をご覧いただきたいと思います。
57歳の男性です。
右示指のばね現象を訴えて来院されました。
5年前より、飲食店を始められて、手をよく使うお仕事をされています。
いつからかはっきりとはわからないそうですが、右示指の屈伸動作を繰り返し行う事でばね現象が出現するとのことでした。
左の写真は初診時のものです。
赤色矢印で指している部分に弾発現象を触知することができました。
左の動画は、実際にばね現象が生じているものです。
指を曲げていくときに、カクンというひっかかり(弾発現象)が起こっているのがわかります。
圧痛部位や弾発現象はA2pulley部で認められたため、
A2pulley部でのばね指であるとわかりました。
治療としては、手術は行わず、注射と固定装具を処方しました。
治療としては、A2pulley部で生じているばね指では、
腱の腫大が原因となっているので、
まずは患部の安静を図るため症具療法を行って様子を見ます。
このように、一見同じように見える弾発現象も
狭窄される部位が違う事であっても、
全く違う病気であるという事をご理解いただきたいと思います。